タイの「カオニャオ・マムアン」

タイはグルメが有名な国と言えるだろう。世界中の美食家をも魅了するこの地には、ミシュランガイドもその魅力に応えるように、数々のレストランが紹介されている。2017年に初めて発行された「ミシュランバンコク2017」では、三ツ星を獲得したレストランはなかったものの、伝説的なレストラン「Gaggan」が二ツ星を手にしている。以後定期的にミシュランガイド・バンコクは発行されている。

私は無類のタイ料理好きだ。その理由を聞かれると、真っ先に答えるのは「辛いものが好きだから」。タイ料理の多くは、辛さがその特徴の一つだ。辛さに弱い者にとって、タイ料理はとても挑戦的だろう。しかし、この辛さが私にとっては快感であり、タイ料理の虜となる要因の一つだ。最近はタイ国内でも辛いものが食べられない人が多いという事が認知され、辛いものは大丈夫かとオーダーのときに問われることが増えたように思う。

さらに、その豊富な香辛料も魅力だ。タイの香辛料は、インド料理のようなスパイスとは多少異なり、ホーリーバジルやレモングラス、バイマックルーなど、タイらしい生のハーブが主役となっている。それらの香りが、何とも言えない深い味わいを生み出している。

そして、タイ料理の調味料も一興だ。「ナンプラー」は多くの人に知られているが、「カピ」と呼ばれるエビの発酵調味料など、日本ではあまり馴染みのないものも数多くある。これらのユニークな調味料が、タイ料理の深みを加え、私をさらに引き寄せているのだ。

そんなタイ料理の中で、私が最も好きであるデザート「カオニャオ・マムアン」を知っているだろうか。呪文のような響きのこの名前、実際にそれが何なのか分かる人は少ないだろう。だが、このデザートこそ、タイを訪れた際に必ず一度は食べてほしい一品だ。甘いもち米に熟したマンゴー、そして練乳をかけて食べる。説明を聞くだけで驚かれるかもしれないが、日本のおはぎと同じく、もち米と甘味の組み合わせであることを考えれば、それほど奇抜なものではない。

名前の由来を説明しておこう。「カオ」はお米、「ニャオ」は粘り気を表す。「マムアン」はマンゴーを意味する。つまり、「カオニャオ・マムアン」とは、そのままもち米とマンゴーのデザートというわけだ。

初めてこのデザートを口にするとき、私は少し不安を抱きながらも口にした。一口目、見事にその美味しさに打ちのめされた。それ以来、私はこの「カオニャオ・マムアン」に完全に夢中になり、こうして記事を書くに至るまでになったほどだ。どれほど病みつきになったかというと、タイ米のもち米とマンゴーを取り寄せ、自宅で作るほどだ。自分で作ったものは、現地で食べたあの味には及ばない。おそらく、マンゴーの新鮮さが大きな違いを生んでいるのだろう。

このデザートを味わうのに最適な季節は、マンゴーが最も美味しい時期だ。タイのマンゴーは、雨季が終わる11月から6月にかけて旬を迎える。これほど長い期間、マンゴーの美味しさを堪能できるのは、タイの魅力の一つだ。

最後にバンコクにある「ゴーパーニット」というお店を紹介しよう。この店は、ミシュランのビブグルマンを獲得している老舗で、なんと80年もの歴史を誇る。王宮の近くに位置し、地元の人や観光客で賑わうこの店はなんと「カオニャオ・マムアンの専門店」として名高い。店先には、新鮮なマンゴーが山積みになっており、その風景だけでも専門店としての威厳を感じさせる。

小さな店内には、せいぜい5人ほどしか座れないが、その狭さがかえって味わい深い。オーダーするとすぐさまに熟れたマンゴーが皮を剥かれ、もち米の上に美しく盛り付けられる。80年続くこの店の味は、まさに一口食べるごとにその歴史を感じさせる。

タイを訪れ、王宮を見学したその後には、呪文のような名前であるが、ぜひ「カオニャオ・マムアン」と「ゴーパーニット」の名前を思い出してほしい。この味の虜になって日本へ帰国してほしい。

ゴーパニットのカオニャオマムアン。このメニューのみで80年以上続けられるだなんて。なんという店だ。
他の店のカオニャオマムアン。マンゴーに甘いもち米のセットで提供される。もち米はとにかく甘い。マンゴーともち米どちらが甘いかというともち米だろう。更にこの上に練乳をかけるのだ。
どこで出されるカオニャオマムアンも同じスタイルであるが、もち米に少し違いがある。ココナッツシュガーを使うと少し茶色のもち米になる。上に掛けられているのはおそらく「白ごま」だろう。
カオニャオマムアン好きにはたまらない風景だろう。
タイのマンゴーの旬は11月〜6月ごろである。旬ではない時期に行くとマンゴーはもちろん、カオニャオマムアンも無いと思った方が良い。

ゴーパニットにて。カオニャオマムアンでビブグルマンを取得。バンコクのミシュランにはストリードフードが多いのもまたバンコクらしさである。

ゴーパニットの店先にはマンゴーが並べられている。日本では一つ1万円という値段のマンゴーが存在するくらい貴重。
ゴーパニットの店内は5人くらいしか座れない非常に狭く、逆に落ち着く空間である。歴史を感じる場所である。

書いている人について
Go, Discoverを運営している小西裕太です。記事や写真などすべては私が書いて撮影したものです。私は金沢市を拠点にWeb制作などの仕事をしていますが、旅が大好きで、これまでにアジアやヨーロッパを中心に20数カ国を旅してきました。まだ訪れた国は決して多くはありませんが、その中で経験したことはどれも心に残るものばかりです。思わず笑ってしまうような出来事や、心が温かくなる瞬間。旅を通して感じたものを、いつか誰かと分かち合いたいとずっと思っていました。もしこのサイトを通じて、「旅に出てみたいな」と思ってくれる人が一人でも増えたら、それ以上に嬉しいことはありません。

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