スペイン・カタルーニャ「サグラダファミリア」

サグラダ・ファミリア、その名を耳にしたことがない者はいないだろう。スペイン、いや、カタルーニャの中心地バルセロナにそびえ立つこの教会。アントニ・ガウディという稀代の建築家が1882年に設計を始め、未だにその完成を見ていない。1882年から100年以上経ってなお、工事が続けられている。最近では2026年には「イエスの塔」が完成し、2034年には全体が完成すると噂されているが、それも今の技術をもってしてのことだ。ガウディ自身が望んでいた姿は、果たしてどこまで現代の手によって実現されるのだろうか。

19世紀、ガウディの生きた時代は、まさに「鍾乳洞ブーム」だったと言える。フランスのラスコー洞窟や、イタリアのグロッタ・ディ・カストローナなど、神秘的な洞窟が次々と発見されていた。ガウディもまた、その流れに乗るようにマヨルカ島のドラッチ洞窟やアルタ洞窟を訪れ、その自然が作り出す造形美に惹かれたと言われている。サグラダ・ファミリアのその独特な柱や天井のデザインに、彼が見た鍾乳洞の影響があることは、容易に想像がつく。

そして、サグラダ・ファミリアが建つこのバルセロナという街。だが、この街を「スペイン」と呼ぶことには、少しばかりの違和感がある。バルセロナはカタルーニャであり、カタルーニャはバルセロナだ。カスティリャ語(スペイン語)ではなく、カタルーニャ語がこの地の人々の心を繋いでいる。988年頃、バルセロナ伯爵によってカタルーニャはフランク王国から独立を果たした。その後、地中海を跨ぐ広大な領地、バレアレス諸島やイタリアのシチリア島、さらにはギリシャのペロポネソス半島までもがカタルーニャの支配下にあった。今でも、その時代の文化が街の至るところに息づいている。

バルセロナを歩けば、カタルーニャの芸術が海の影響を強く受けていることに気づくだろう。貝殻をモチーフにした建物や、波のリズムを思わせる曲線。ガウディのカサ・ミラやカサ・バトリョも、まさに海と大地が融合したような独創的なデザインだ。サグラダ・ファミリアのステンドグラスに差し込む光も、まるで海の中にいるかのような幻想的な世界を作り出している。

初めてサグラダ・ファミリアを訪れた時、その感覚は圧倒的だった。あの感動は忘れない。天井を見上げると、まるで波が頭上を覆うかのような錯覚に陥る。ステンドグラスを通して射し込む色とりどりの光は、まさに海底の景色そのものだ。理屈ではなく、ただただ圧倒される。この教会は、見た者の心を一瞬にして掴んで離さない。ガウディの手によるこの建築物は、もはや人間の手を超えた存在に近い。

だが、サグラダ・ファミリアの感動も、バルセロナの街中に一歩踏み出せば、現実に引き戻される。スリだ。ランブラス通りやゴシック地区を歩けば、人の気配が絶えない。バッグのファスナーがいつの間にか開けられているのも、もはや驚きではない。地元の人々でさえ、スリへの警戒を怠らない。私も何度もその手口にやられそうになった。スリの存在が心に緊張をもたらす一方、サグラダ・ファミリアが与えた感動は、深い余韻を残す。感動と警戒、吊橋実験のようなこの2つのドキドキが共存する街、それがバルセロナだろう。

天井はまさにカタルーニャ芸術といえば良いのだろうか。深海の貝殻や深海にさす光をイメージした。この景色を見ると1時間は動けない。
教会の天井は非常に高く作られている。差し込む光はまさに海底にいるかのようである。
祭壇やパイプオルガンが目に入るとようやく協会であることに気がつく。まさに異空間である。
日の当たり加減によってまったく異なった色彩を見せる。ステンドグラスの美しさとはこのように使うものなのだと手法をまじまじと見せつけられる。
この風景は誰もが知るサグラダファミリアの風景だろう。内部は海底のように美しく観るものすべてを魅了する。

書いている人について
Go, Discoverを運営している小西裕太です。記事や写真などすべては私が書いて撮影したものです。私は金沢市を拠点にWeb制作などの仕事をしていますが、旅が大好きで、これまでにアジアやヨーロッパを中心に20数カ国を旅してきました。まだ訪れた国は決して多くはありませんが、その中で経験したことはどれも心に残るものばかりです。思わず笑ってしまうような出来事や、心が温かくなる瞬間。旅を通して感じたものを、いつか誰かと分かち合いたいとずっと思っていました。もしこのサイトを通じて、「旅に出てみたいな」と思ってくれる人が一人でも増えたら、それ以上に嬉しいことはありません。

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