アジアの寝床

東南アジアを旅していると、不意に目の前に広がる光景に、自分の目を疑うことがある。「本当にここで寝ているのか?」と、何度も心の中で問いかけたくなる。奇妙な寝姿。それはインドに足を踏み入れると、さらにその異様さを増していくと聞いて、興味はますます募る。日本でも、酔っ払いが道端で寝ている姿を目にすることはあるが、ここで見かける寝姿はそれとはまるで違う。彼らが横たわるその姿には、アルコールの影響など一切ない。

ただ、その場所が彼らにとって「寝床」として選ばれたに過ぎないのかもしれない。インドでも、きっと同じことが言えるのだろう。寝心地についてはわからないが、きっと彼らにとっては、その場所が最も落ち着ける安息の地なのだろう。生きるということは、もしかするとこうした何気ない瞬間にこそ表れているのかもしれない。だが、それはただの寝床ではなく、人々の生活そのものであり、時にはその場所に根差した深刻な現実を垣間見ることもある。その国や都市に住む人々を象徴するような寝姿。それは、彼らの国、人々の生活そのものを映し出しているかのように感じられるのだ。

まずは、タイのバンコクで出会った寝姿が記憶に鮮明に残っている。正直、見ていてハラハラするような場所で、まるでその場所が自分にとっての聖域であるかのように眠っていた。写真を見てもらえば分かるだろうが、歩道の段差に身を潜め、まるで自分の世界に閉じこもるかのように眠っていた。その姿は、まさに歩行者の足元にあり、うっかり頭を踏んでしまいそうな危険な場所だった。空気も淀んでいるように感じられるその場所が、果たして本当に彼にとって心地よいのか、考えずにはいられなかった。

バンコク市内にて。こんなところで寝ている人は初めて見た。マクドナルドのコップはお金くださいボックス。
中央の男性は下手すると寝ている男性の頭を踏んでもおかしくはない。

アジアのマーケットでは、さらに印象深い光景が広がっている。市場に行けば、鮮魚や野菜が色とりどりに並べられ、賑やかさに満ちている。しかし、マーケットが閉じた後、その台の上で眠る人々を何度も見かけたことがある。まるで市場の喧騒が静まると同時に、その台が彼らにとってのベッドに変わるかのようだ。マーケットだけではない。屋台が閉まった後、台の上で天国にいるかのような微笑みを浮かべて眠る人々にも出会ったことがある。まな板の上の鯉とは、こんな気持ちなのだろうか。

マレーシア・ペナンの午前中に遭遇した。こんなに心地よさそうに寝ている人はなかなかお目にかかれない。
フィリピン・マニラへ行くと少し深刻に感じる。夜もこの場所で寝ている。大人のみならず、子供のみならず、家族で生活している家族を見かけることが多い。
フィリピン・マニラ。コロナ後はフィリピンのインフレのために非常に困窮した人たちが多くホームレスが増えたイメージだ。

書いている人について
Go, Discoverを運営している小西裕太です。記事や写真などすべては私が書いて撮影したものです。私は金沢市を拠点にWeb制作などの仕事をしていますが、旅が大好きで、これまでにアジアやヨーロッパを中心に20数カ国を旅してきました。まだ訪れた国は決して多くはありませんが、その中で経験したことはどれも心に残るものばかりです。思わず笑ってしまうような出来事や、心が温かくなる瞬間。旅を通して感じたものを、いつか誰かと分かち合いたいとずっと思っていました。もしこのサイトを通じて、「旅に出てみたいな」と思ってくれる人が一人でも増えたら、それ以上に嬉しいことはありません。

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